心と体の痛みのお部屋 管理人エリーの日記です。


by elly_mylove
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シドニー、St .Lenordにあるペインマネジメントセンターを訪ねました。

みなさんこんばんは。
今日は、シドニーのノース地区にある、セントレナードというところの有名な公立病院の中の、学際的痛みセンター、という施設を訪ねました。
この病院には、ADAPTと呼ばれる、慢性疼痛患者を社会復帰させるための3週間にわたる教育プログラムがあるのですが、そのプログラムについて取材にいったものです。
インタビューに答えてくださったのは、麻酔科の教授のカズンズ氏。

この3週間のプログラムは、とても有名なプログラムで、慢性疼痛に苦しむ患者のラスト・リゾートと呼ばれています。
どうやってもほかの医療機関で痛みが取れなかった患者に向けて計画されたものですが、今までずっと仕事にももどれずに、痛みに日常生活を送るのが困難だった患者までもが、3週間後には社会復帰するという目覚しい効果があります。

患者は、10人を一つのグループにして、期間中、毎日9時から5時まで、エクササイズと講義を受けて病院近くのモーテルに帰っていくという、まるで学生時代にもどってサマーキャンプに参加したかのような生活を送ります。その講義の内容が独特で、その後痛みとの付き合い方を覚えていくのです。日本にはまだこういった、痛みをひとつの独立した疾患としてとらえる概念がありませんし、疼痛外来とか、ペインマネジメントセンターというものもまだ日本にひとつとか、ふたつとかいう数しかないのですが、これからもっともっと発展してほしい医学の分野だと思っています。

長くなりますので、何度かに連載します。興味がある方はお付き合いください。

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プロフェッサー、まずはこのプログラムのアウトラインからgeneralな質問をさせて
ください。
ADAPTという名前は大文字でイニシャルですね。なんの略ですか?


A day patient training の頭文字を取っている。一日がかりの教育プログラムだ
からね。
よく誤解されるのだが、患者を痛みにADAPTさせるのではないよ。
普通の生活にADAPTさせるという願いがこめられている。
20年前までは、慢性痛の患者に一番のトリートメントは安静だと思われてきた。
けれど最近の研究で、慢性痛を抱えた患者でも、ノーマルライフをリゲインできるこ
とがいくつも確かめられている。それを支援するためのプログラムという意味もこめられていて、なかなかいい名前だと自慢に思っている。


このセントレナードホスピタルは公立病院ですね。
プログラムの運営母体は、病院ですか?それとも政府系の組織がバックにあるのですか?

運営は独立して病院で行われている。でも、ファンドは2箇所からくる。

ひとつは公的保険からのファンドだよ。事故による患者は自動車保険でこのコストを賄うケースが多い。
それから労災保険。労災による怪我がきっかけで慢性痛をおこした患者が多いから。
これがひとつ。保険からファンドを集めて診療費を賄う。

もうひとつは、やはり政府から。何の保険でもカバーされない患者の診療費は政府がかなり補助する。慢性痛の患者が社会にカムバックして、それまで支払っていた医療費を節約できるということは長い目で見て経済的に大きな利益になるから、政府もこのプログラムにはファンドを出している。
全額自費で参加する患者もたまにいるが。

コストは正確にどれくらいですか?

現在は5500ドル。高額だと感じるかもしれないが、これはコストパフォーマンスがとてもいい。ほとんどの患者がこのプログラムのあと、フルタイムの仕事や少なくともパートタイ
ムの仕事に復帰するからね。

患者は主にどんな疾患が多いですか?

あらゆる病気からくる。資料にあるだけで200種類の疾患を扱っている。
ただ比較的多い疾患はバックペインだね。

プログラムは疾患ごとにある程度個人的に組まれたものですか?
それともみなでほぼ同じものをやるのでしょうか。

一部に個人的なアプローチが必要な患者は、その部分だけ個人的なメニューを組む。
そのほかは原則として同じプログラムを10人という仲間で受けてもらう。以前は私たちも、かなり個人的なプログラムも作っていたのだけれど、むしろその試みは失敗に終わった。同じように痛みに苦しむ患者が一緒に、同じプログラムをこなして、仲間が実際にどんどんよくなっているところをこの目で見る、ということが患者にとってとても大切だということがわかってきた。

患者の年齢層は?

あらゆる年齢で特定できないが、働き盛りで参加する人が多いね。
一番、社会復帰が必要とされる年齢だからだろう。
60歳以上の老人性の慢性痛もあるが、これはまたこれで別のアプローチがあるので、ADAPTとはわけて考えている。


スタッフは何人で、それぞれどんな役割で運営されていますか?

サイコロジストがひとり。フィジオセラピストがひとり。特別にトレーニングされたナースがひとり。それからもうひとりがカウンセラー。この4人がプログラムに選任のスタッフ。
カウンセラーというのは、治療費のどの部分をどういう名目で保険にクレームバックするかを決めたり、レポートを書いたりするスペシャリストのことだ。
慢性痛の治療は、コストの問題がとても重要なので、このカウンセラーが患者や保険会社の間にたったり、患者と仕事場との間にたったりして、とても重要な役割をこなしている。
私たちは平行して一時期に2グループの患者を受け入れているが、最低この4人がフルタイムでプログラム選任にならないとプログラムは回らない。そのほかに、ドクターの回診は週に1回。これは主に減薬指導などにあたる。

そうすると、重要な役割をするのはむしろドクターではないのですね。

そう。この取り組みは治療ではないからね。マネジメントを教えるものだから。


ところで、君は患者だったそうだが、この国でどんな治療を受けたの?

鞭打ちです。その後頚椎ヘルニアになり、顎関節症を合併して痛みが取れなくなりました。
日本では、神経質で片付けられて適切な治療を受けられませんでした。
4年前になりますが、そのころは慢性痛の概念さえ日本にはなかったように思います。



そうそう、よくわかるよ。それも教育が行き渡っていないからなんだ。


この国に来てGPにかかったとき、慢性痛症候群だといわれ、治療を始めて抗鬱薬の
投薬とリハビリで寛快しました。
日本で何年もわからなかったのに、こちらではただのGPであっさり診断してもらえ
たのでびっくりしましたが・・。慢性痛のトリートメントはGPにも行き渡っているので
しょうか。


イエス。私たちはこの病院でも、週に一度慢性痛のトリートメントについてGP向け
の講習会を開いている。プライマリケアにあたるGPに慢性痛のケアを身に着けても
らうことはとても大切なことだから、とても力を入れている。
この国は人口が少ないので、スペシャリストも少ない。スペシャリストに行くのに、
大変な待ち時間を必要としなくてもいいように、GPの守備範囲を広げるのは大切な
ことで、慢性痛に限らず、GPには様々な科目にたいしてにfurther trainingのチャ
ンスがあるよ。特にわれわれのGPへのトレーニングは優れていると思っている。


(★これは本当のことで私もよく知っていました。GPは少なくとも月に一度は研修
会に出ることが政府から義務付けられています。多くのGPはgeneralのほかに自分
の得意診療科目を持っています。精神科や、皮膚科など、治療が薬物中心で医療機器
がいらない、しかも疾患が慢性化しやすい診療科目は、一度スペシャリストに出て
も、寛快や維持期になるとGPのところに帰ってくることが多いので。得意な診療科
目を持っているGPはセミスペシャリストという感じで、看板を出せるわけではありませんが、患者が口コミや紹介で集まります。ちょっと診療費が高かったりします。)

さて、残りはまた明日に書きますね。

★こういう痛みのスペシャリストがいて、その下にいるプライマリーケアを引き受けるGPにも慢性疼痛について必要なトレイニングをしているので、日本では治療できなかった私の痛みがオーストラリアで治ったのですね。

日本にはGPというシステムがありませんが、どこのどんな大学出身の何科ドクターでも、
希望するトレイニングが受けられる柔軟なシステムをとてもうらやましく思いました。
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by elly_mylove | 2004-12-09 20:49 | メインサイトについて